書籍「ゲルっていいじゃない」株式会社テクノシステムより、2016年3月12日に発刊されました。

-発刊にあたって-

ものづくりの化学工学

ゲルは難しい。ゲルは馴染み深い材料なのに,よくわからないと感じるのはなぜだろうか。ゲル化したり壊れたりするので,ゲルの性質がよくわからない。例えば,ケチャップは振ると流れるが,片栗粉は攪拌すると固まる。全く逆の現象で,振ったり混ぜたりすると,ゲルが壊れたりゲル化したりする。これらの現象はチキソトロピーとか,ダイラタンシーといわれるが,根本のところがわからない。つまり, なぜ,ケチャップがチキソトロピーで,片栗粉はダイラタンシーなのか。
ゲルは結晶などと異なり,もともと非平衡材料である。それも,熱力学的な非平衡性と流体力学的な非平衡性がカップリングしているから難しい。しかも,ゲル物性は非線形性が強く,単純に予測はできない。また,ゲル構造の解析も階層的に理解されるようになったが,そのゲル構造とゲル物性にはいまだにギャップがある。 そして,同じ材料を用いても,製造プロセスによりゲル構造が変化する。全く,つかみどころがない。
ゲルに関する書籍は数多く出されているが,「ものづくり」の視点から書かれた書籍はほとんどない。本書はできる限り,know whyを追求し,「ものづくり」とゲル構造, そして,ゲル物性を関係付けることを心がけた。とはいえ,やはりゲルは難しい。読者の批判を仰ぎたい。

2016年 3月 山口 由岐夫